「水」を通して、よりよい社会づくりを行う三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社。その根幹を担っているのが、技術開発や水分析を行っている研究所です。2022年8月には、秋津研究センターと鶴見研究センターという2つの研究所が一つに統合され、「秋津研究センター」として新たに生まれ変わりました。そこで今回は、統合の経緯やその狙いについて説明してもらいました。

<参加者>

  • 新しく生まれた「秋津研究センター」の魅力。研究センターの統合で実現したダイバーシティと事業横断的な組織

    山東 丈夫

    技術統括室
    秋津研究センター長

  • 新しく生まれた「秋津研究センター」の魅力。研究センターの統合で実現したダイバーシティと事業横断的な組織

    菊池 隆

    技術統括室
    秋津研究副センター長

  • 新しく生まれた「秋津研究センター」の魅力。研究センターの統合で実現したダイバーシティと事業横断的な組織

    金子 真

    技術統括室
    技術管理部長

――統合前の秋津研究センターと鶴見研究センターでは、どのような研究を行っていたのですか。

山東: 三菱ケミカルアクア・ソリューションズは、2019年に三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社(旧日本錬水)と株式会社ウェルシィが統合してできた企業です。秋津研究センターは、もともと旧ウェルシィの研究所で、今回、秋津に統合された鶴見研究センターは旧日本錬水の研究所でした。両研究所では、水にまつわる研究を行っていました。旧秋津研究センターでは病院などで利用される地下水飲用化システムの開発を、旧鶴見研究センターでは工場などに向けた「純水」という混じりもののない水を造る装置開発を行っていました。他にも、植物工場など他の事業部で使う水の分析や、「バイオプロセス」と呼ばれる、微生物を使って水をきれいにする研究なども行っています。

――普段なにげなく使っている水も、用途に応じて様々なものがあるのですね。

山東

山東: 東日本大震災のときも、弊社の地下水膜ろ過システムを導入していただいている病院では、水道が断水しても、綺麗な水を利用できたと伺っています。また、昨今半導体産業での純水のニーズは伸びていますね。こういった社会の根幹を支える仕事に携われるのがやりがいでもあります。

――今回の統合理由について教えてください。

山東: 両研究センターの研究に係る要素技術は非常に共通点が多くありました。よって、統合する事で協奏による相乗効果を生み出せると共に、研究員の視野の拡大にも寄与できると考えています。また、家賃や庶務など研究以外に係る部分のコストの削減にもつながり、効率的に資源を純粋な研究活動に配分できます。

――統合はいつ頃から始まったのでしょうか。

金子

金子: 「研究センターを一つにしよう」という話自体は、2020年頃からありました。本格的にプロジェクトが進み始めたのは2021年の秋くらいからですね。経営で承認されて、正式にプロジェクトが始まったのが、2021年の12月24日。工事の締切がギリギリで焦った思い出があります。統合の完了予定日は2022年9月でした。準備期間が短く「9か月で本当にできるかな」というのが、その時の率直な感想です。

――短期間で統合を進めていくなかで、大切にしたポイントがあれば教えてください。

金子: 建物や機材などハード面については、リスク管理や確認作業を大切にしました。特に工事期間と予算については、毎日のように試算をしていましたね。短期間ということに加えて、新型コロナウイルスやウクライナとロシアの戦争の影響による資材不足で、工事にかかる費用も金額も変動的だったのに苦労しました。「工事がこれくらい遅れたら、いくらぐらい費用がかかる」という計算は欠かせませんでした。

――鶴見研究センターの研究所としての機能はどのように移管したのでしょうか。

金子: 移管内容としては、メンテンナンス部が倉庫として使っていた建物を大幅改装して、鶴見の方々に移っていただくことになりました。面積が元の約3分の2になってしまうため、まずは何を持ってきて、何を捨てるのかという選択をしました。それが終わったのが2022年の2月くらいですね。あとは、建物に防水塗装を施し、電気設備を取り付け、換気扇や空調設備を整え、実験室として機能できるようにしていきました。

菊池: 機能や機材の選択も大変で、一部の機能を縮小したり、他の事業部に任せられる業務はそちらに任せたりしましたね。

――倉庫を研究所に改装するのは大仕事ですよね。

金子: 似た事例がないため、どこに何を設置するかという配置図をエクセルのポンチ絵で地道にまとめていきました。その方眼紙を元に、動線や換気の流れ、避難経路などを「ああでもない、こうでもない」と歩きまわったり、消防の方に来てもらってアドバイスを聞いたりしながら確認していきました。

山東: 天井の高さがちょっと足りないところもありましたね。

金子: 天井の高さと機材の高さは測ったものの、蛍光灯で取られる分の長さを計算に入れ忘れていて、新たに配置を考え直したこともありました。

――企業文化や組織といったソフト面については、どのように統合を進めていったのでしょうか。

山東: 組織については、大幅に刷新しています。以前は、「この組織はここの事業部の開発」と言うように事業部毎の縦割りの組織構造でしたが、今回の統合では相乗効果を出すという目的がありましたので、技術を軸とした事業横断的な組織に変更することで、他の技術や事業にも研究員が関心を持ちやすい環境を整えました。

――事業横断的な組織にしたことでどのようなメリットが出ていますか。

山東

山東: 旧秋津研究センターの若い研究員が開発に行き詰った際に、旧鶴見研究センターのベテラン研究員からの助言で課題を解決するということがありました。さらに、現在ではアドバイスをした側のメンバーが開発に加わり、一緒に課題の解決に取り組んでいます。 今回の事例の様に研究員がこの統合を機会に、自分の関心がある事業に関わりやすくなったと考えています。そういった流れを今後加速していきたいと考えています。

――もとは別々の会社の研究所だったわけですが、企業文化的な違いについてはいかがでしょうか。

山東: 一言で言えば、「真逆」でした。ウェルシィは、買収されて三菱グループになったのですが、それまでは良くも悪くもベンチャー気質と言いますか、若いメンバーが多く「なんでも挑戦していこう」といった雰囲気の会社でした。反対に、長い間、三菱グループの水事業を担ってきた日本錬水は、慎重さと豊富な知見がある会社なんです。働き方も、秋津研究センターの研究員は遠隔監視システム等を利用してリモート勤務するメンバーも多くいましたが、鶴見研究センターの研究員は実際に研究所に来て作業するメンバーが多かったですね。

――統合したタイミングでトラブルはありませんでしたか。

山東: 気質が異なる2つの研究所が一緒になるにはどうしたら良いのか、特にこちらにきてもらう鶴見の方のサポートをどうすべきかと考えていましたが、実際統合したら、特に問題もなく、お互いにないところを補完し合えている気がします。働き方についても、一人一人が自分にあった働き方を選びやすくなりました。

――移動されてきた、菊池さんはいかがでしょうか。

菊池

菊池: 私たちとしては、2015年にも引っ越しをした経験があり、今回の場合も「またか」というのが第一印象でした。ちょっと家から遠くはなりましたが、ギスギスしたところもなく楽しく仕事ができています。

――ここからは、皆さんに統合後の「水ラボ」の魅力について教えていただきたいです

山東: 建物がとても綺麗です。ラボも清潔感がありますし、一息つけるリラックススペースも充実しています。コーヒーやお茶を飲んでリフレッシュしたり、キッチンもあるのでちょっとした食事を作ったりもできます。研究スペース以外では、温かみのある木の素材が取り入れられていて、ほっと落ち着けるような空間になっています。

――働く環境は、とても大事ですよね。建物の中を拝見させていただいて、本当に綺麗で社員の方を思った作りになっているなと感じました。

山東: 「色々な人が働いている」というもの特徴の一つですね。業界的には、圧倒的に男性が多いのですが、秋津研究センターでは男女比は半々ですし、若い人も多くいます。中国やバングラデシュ出身のメンバーも働いており、ダイバーシティのある職場とも言えます。今回の統合で、より多様なメンバーになったと考えています。

――本当に多様性のある職場ですね。その他の魅力はありますか。

菊池: 「幅広い視野をもって仕事ができる」という点も魅力だと感じます。以前は、人が事業部に紐づけされていたため、固定化していたと言いますか、自分の業務以外は目に入りにくかった部分がありました。しかし、今回の統合で、事業横断的な組織となったため、隣の人がどんな仕事をしているか、とか「この研究も面白そうだな」とか、様々なことに関心を持ちやすくなったと思います。

金子: 私は、正反対の2つの会社を一つにまとめたというところが一番の強みだと感じています。ウェルシィはベンチャー企業なので「様々なことに挑戦できる空気」があり、旧鶴見研究センターは、純水という熟成された産業で、昔から様々な試行錯誤や苦労を積み重ねてきた経験があります。そんな2つの研究所が一緒になることで、お互いの足りない部分を補完しつつ、良い部分をさらに伸ばしていけるのではないかと期待しています。

――これから、どんな研究所にしていきたいと考えていますか。

金子: 今回、とても良い形で一緒になれたと考えているので、水ラボが会社全体を成長面で引っ張ってくれるような研究所になってほしいですね。

菊池: 研究者たちが、様々な分野や知識に触れることを大切にしつつ、入社された方が、自分の関心があることを広げていける環境づくりをしていきたいですね。

山東: こちらに移ってこられた鶴見の方々のケアをしながら、落ち着いたら一緒に新しいことをやってみたいと考えています。統合は終わりましたが、研究所としてのスタートはこれから。様々なバックグラウンドを持った方が働きやすい環境を作りつつ、研究センターとしてしっかりとした結果につなげていきたいと考えています。